[1]『アルベマス』P.K.ディック [Radio Free Albemuth] Philip K Dick |
『VALIS』に連なる作品の一つ。あまりに今の自分の気分にシンクロしてて読んでて辛かった。同時にあまりにもリアルだった。不完全な神が作った残酷で悪意に満ちた世界に善的なものが介入するというグノーシス的世界観を背景にした物語。同時にディックの個人的な神秘体験が色濃く反映されていて、それがこの作品を異形にしている。死でさえ「救済」や「大きな目的」という名のもとに善しとする考えは一種の狂気。生の意味を捕らえ損ねかねない。しかしこの作品を読んで涙を禁じ得ないのは何故だろう。この思想自体、弱く壊れやすい人間が、この敵意だらけの世界を生きていくために、なんとか見つけだした一種の逃げ場だったかもしれない。しかし僕にはリアルな世界だった。僕にとってこの本の中の世界は真実。今halが『VALIS』を読んでいる。最初の数ページで彼女にはこの本が自分の世界を描いているように感じたと言っていた。僕も『アルベマス』を読み終えたのでまた『VALIS』に戻ろう。ディックのこの危うさは抗いがたい魔力を持っている。芥川龍之介の『歯車』のように狂気の人間が書いた黙示録。ディックの狂気は覚醒だった。