zoё's studio:DIARY

ECCE HOMO

※ECCE HOMOとはニーチェの半自伝的かつ狂気に満ちた晩年の作品『この人を見よ』の原題で、
ここではzoёの偏見と怒りと笑いに満ちた日々の記録のことである



1999.2.1.MONDAY. 
hal幽霊に悩まされて不眠。この幽霊は実は10日程前にもhalに見られている。その時はもしかして白昼夢だったのかもという可能性がかすかにあったのでもう気にして無かったらしいんだけど昨日の晩からまたその存在を感じて確信したらしい。hal曰く、怖くはないらしい。初めて見た時は昼頃ぼうっとしてる時に通りに面してる閉まってる窓からスッと入ってきて彼女のベッドルーム兼リヴィング・ルームを歩き回って消えたらしい。影しか見えなかったらしいんだけど怖くなかったという話。今回は寝ようとしてしばらくしたら部屋を歩き回ってる気配を感じて、眠くて放っておいたらしいんだけど一晩中歩き回ってて、衣擦れの音とか歩き回る時にちょっと物にぶつかる音とかがずっとしてて気になって眠りにつけなくて結局朝五時に起床。今日のセッションは昼からだったんだけどやっぱり眠くなってきたので欠席することにして昼寝を試みてたら、また出たという。今度はhalのベッドの横をウロウロしてて、しまいには枕元に来て何かをhalに囁くらしいんだけど、なんて言ってるかわからない。何語でもなくて、強いて言うならHALの“insects”のイントロでhalの話しているのを逆回転にして録ってるんだけどその雰囲気に近かったと言ってた。でも凄く美しい響きだったらしい。囁かれている時の気配は本当に不思議で、おまけに聞いた事のない言語で話してるし、なんとも表現できない感覚だったらしい。男か女か年は幾つぐらいか、インタヴューを試みたら、男でだいたい僕と同じぐらいだったと言ってた。僕は話を聞いてたら何となく年寄りの幽霊かと思ってたのでこれは意外な答えだった。スタジオでアシスタントをしてるスティーヴンと幽霊話しをしてたらヤツも一回見た事があると言ってた。寝てて気付くと誰かが部屋を掃除してて良く見るとヴィクトリア朝時代の格好をした女性だったと言う。幽霊の格好も土地土地で違うと思うと面白い。僕は幽霊現象の一部は一種のレコーディングだと思ってる。例えばテープに磁気を使って自分達の演奏を録音できるように、土地や場所にもある種のレコーディング機能があって、強い感情やくり返される感情はそこに録音または録画されるんじゃないかな。実際処刑場跡や人が沢山死んだ場所がなんとなく殺伐としているのはその場所に強い感情が記憶されてるからだと思う。人の声がマイクを通って電気的な信号になるように人の感情も発散されて何かしらの電波、磁気的なものに変換されているという可能性はないともいえない。ラジオと同じでそこに周波数を意識的にせよ無意識的にせよ合わせられる人は幽霊に遭遇しやすい。実際疲れてたり神経が過敏になってる時は聞こえる周波数が変わる。halはそれが顕著でテレビとかをつけるだけでキーンという高周波が聞こえて頭が痛くなる時があるといってるので、今回はレコーディング中でテンションが無意識的にもあがっててたまたまそういうものを感知してしまったのかもしれない。でも僕は正直言って幽霊は怖い。 『レクイエム』読了。『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』着手。『秘密捜査』読みはじめる。

1999.2.2.TUESDAY. 
“CONTRACT KILLER”“666”歌録り。halは素晴らしいパフォーマンスをみせてくれた。特にハーモニーをつけた“666”を聴くのは初めてで圧倒的な歌に感動した。sinister&charming、略してS&Cだった。これはアンディとの共通のキーワードのひとつ。歌を録り始めると曲全体の姿が大きく浮かび上がってくるので気合いが一層入る。Calumからスタジオに電話があり、話したら元気そうだった。明日はフラットを移動する。JAZZ FMからエディ・ヘンダーソンの曲が流れてきた。クール!

1999.2.3.WEDNESDAY. 
午前中にスタジオに行き、“BTBN”のギターを録る。ちょっと『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』をやって、午後1時30分頃スタジオを出て、新しいフラットの鍵を取りに別のホテルへ行く。こっちのシステムは面白くて、鍵を管理してるのが不動産屋じゃないみたい。ホテルの親父は僕の顔を覚えていて鍵をすんなり渡してくれたのでフラットに戻った。ここでちょっとした情報の行き違いがあってhalが御機嫌斜めになっていて大変だった。新しいフラットは前のところよりも広くて快適そうだった。halの機嫌をとりつつスタジオに向かった。怒りに任せて“DNA”と“BTBN”の歌を録る。怒りに満ちた歌なので結果的に素晴らしいテイクがとれた。『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』が進展を見せて面白くなってきた。 JAZZ FMでいつものピート・ジョンソンのブルースの番組を聴いてたら、1955年リリースの“I'm John Lee Hooker”というアルバムからタイトルがわからない曲がかかってた。かっこいい。エリック・コウバソンという人は全く知らなかったんだけどこの番組でしょっちゅうかかってて、どの曲もかっこいいので好きになった。今日は“I Promise Myself”という曲がかかっててこれまたしびれる曲だった。ハウンドドッグ・テイラーもかかっててこれまた、わびさびバリバリでサビがまた強烈にピリピリくる一曲だった。ラジオ番組をこんなに楽しみに聴いたのって何年振りだろう。中学生の時以来かも。日本のFMはもうすっかり画一化されて退屈になってしまったからね。

1999.2.4.THURSDAY. 
最近halはまた手巻の煙草を吸っている。巻かたがスタイリッシュでとても綺麗に巻く。あれは一種の才能だね。煙草を巻くのってうまく出来ない人はずっとうまく出来ないと思う。僕みたいにね。勿論巻けるようになるんだけど綺麗にはなかなか巻けない。うまく巻ける人はすぐにうまくなる。halのお気に入りの手巻き煙草シュバルツァー・クラウザーはドイツのもので残念ながらロンドンでも売ってるのを見た事が無い。今はゴールデン・ヴァージニアという巻煙草を吸っている。僕も時々もらうけど煙草らしくておいしい。普段は僕はマルボロ・メンソール・ライトを吸っている。ここでは売ってないのでカートンで何箱か買ってきた。あとシゲソニックが来る時に買ってきてもらったり。一度はキャサリンが仕事でアイルランドに行く時に免税店で買ってきてくれた。結局halは今日休んだ。僕は午前中に歩いてヴァージン・メガストアに行って何枚かCDを買った。MASSIVE ATTACK の11枚入り CD SETと KILLING JOKEの“LAUGH?I NEARLY BOUGHT THE ONE”をhalに。僕にはJAMES COTTON。それから本屋でエルロイの“L.A.CONFIDENTIAL”の原書と映画化された際の脚本も買った。こっちに滞在中に出来ればエルロイの原書は全部そろえたい。今日は“CYCLOTRON”のギターの一部を録った。『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』は良い感じに進んでたんだけどまた行き詰まってしまった。今日の夜eoeの奥さんmaimaiさんと娘のリンちゃんロンドンに到着。HALのファンの有志がやってくれているプライベートのHALのホームページが活況を呈していて僕も楽しく見てるんだけど今日eに教えてもらたところ、新たにページが増えていて(CLUB DRAGOONっていう名前だったと思う)楽しみな感じだった。MINDGATEとNEXUSというページには僕もよく伝言を残したりしている。参加してるみんなの間で会話が活発に行われているので読んでて楽しい。長く続いて行くといいなー。

1999.2.5.FRIDAY. 
“HOWLING”歌録り。グレイトなパフォーマンス!ギターも録った。“NAKED TRACKS”と別ヴァージョンにするためにも違うアプローチでギターは取り組んだ。『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』はやる時間があまりなかったせいもあって何の進展もなし。昨日halに買ったKILLING JOKEのベスト盤が素晴らしくて二人してはまってる。ほとんど持ってるんだけどこうやって違う曲順で彼等の歴史を俯瞰しつつ聴いてみるとまた違った良さが浮かび上がって来る。僕にとってこのバンドは予想以上に大きな存在になりつつある。今日は帰りに鞄に入れてたジュースがこぼれてて本とか中に入ってた物が水浸しになった。でも本は読める状態だったのでOK。鞄も買い換え時だったのであんまりショックでもなかった。

1999.2.6.SATURDAY. 
“CYCLOTRONE”歌録り。半分やった。『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』は謎が多くて堂々回りになってきたので断念。僕は根気がないらしい。日本に戻ったらマニュアルを買ってもう一回挑戦だ。エルロイの『秘密捜査』読了。これでロンドンに持ってきたエルロイの本は全て読んでしまった。日本に戻ったら『アメリカン・タブロイド』を入手しよう。

1999.2.7.SUNDAY. 
今日はオフ。BERWICK STREET にあるSISETER RAYというレコード屋に行った。SOHOの近くでこの通りぞいに沢山レコード屋がある。今のフラットから歩いて20分ぐらいでちょうどいい散歩代わりになる。halが KILLING JOKEにはまっているので何枚か持ってないやつを探そうと思っていた。KILLING JOKEは1枚目から4枚目とあと再結成した後の作品を2枚持っていて、彼等がヒット曲を出した一般につまらなくなったと言われてる時代の2枚のアルバムは持っていなかった。でも先日買ったベスト盤が素晴らしく良くて、中期の作品も侮れないという結論が出て、手に入れることにした。途中で本屋に寄ってエルロイの原書を買った。ブランドン・エリスの“AMERICAN PSYCHO”も買おうか迷ったけど、まず買った原書を読んでからにしようと思ってやめた。ホプキンス・シリーズ3冊がまとめて1冊になっててL.A. NOIRと名付けられて売られてた。コレクター的感情が働いて欲しくなったけどこれも断念。まずL.A.QUARTETを読み終わってから、他の原書には挑戦しよう。本屋のあとBERWICK STREETぞいのレコード屋を覗いて何枚か買って、カフェで一服して、帰りにSAFEWAYで日用品の買い物をして帰宅した。今日『アルジャーノンに花束を』を読みはじめて一気に読み終えてしまった。。年末か年始に偶々つけてたテレビでダニエル・キイスの番組を観たhalが興味を持って、読んでみようかなーと言い出して、購入した。『24人のビリー・ミリガン』は強烈なインパクトがあったので、この作家のことは知っていた。halが読み終わって、次にeが読んで、その次に今僕が読んだ。こんなに読まれるとはこの本も思ってなかったにちがいない。ところで今日は非常に晴れてて気持ちよかった。めちゃくちゃ寒かったけど。

1999.2.8.MONDAY. 
“CYCLOTRONE”歌録った。結局先週の土曜に録ったテイクをhalが気に入らなくて全部録りなおした。しかしあがったものは実際見違える程素晴らしかったので録り直した甲斐があった。その後間髪いれずアンディが“666”の英語ヴァージョンをやろうと言い出して休む間もなく始まった。今までHALでフルの英語ヴァージョンの曲はないので興奮した。今日は仮ヴォーカルを録った。帰る時雪が降っていた。ロンドンで初めて雪を体験したかと思ったら、前のレコーディングの時に一度降ったらしい。全然覚えてなかった。顔が痛くなる程の寒さだった。さて今日から『蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす-ヘミングウェイ全短編集3-』を読みはじめた。ヘミングウェイに関しては僕はその短編を高く評価している。彼の短編には天才を感じる。幾つかの作品は何度も読み返した。新潮文庫から彼の全短編集が出た時は嬉しかった。それまではどうしてもベスト・オブ的なものしかなくて、出来れば全部読んでみたいと日頃から思っていたから。平行してニーチェの『善悪の彼岸/道徳の系譜』も読みはじめた。ニーチェはツァラツストラの前半を熟読してて個人的に非常に影響を受けてきた。この本はツァラツストラの解説書的な意味を込めて書かれた。

1999.2.9.TUESDAY.
今日はほっとした。何がホッとしたかと言うと、halの歌入れがほとんど終了したから。実際今日はhalにとってはハーデスト・デイだった。英語ヴァージョンの歌入れが2曲。そのうち1曲はほとんどその場で憶えて歌うという感じだった。しかしHAL の曲の英語ヴァージョンを彼女は見事に歌い切った。撥音はもともとhalは綺麗で、直されたりすることはなかったけど、それでもいきなり歌詞を見て英語ヴァージョンを歌うのは誰にでも出来る事ではない。一つの偉業を目の当たりにした。やった曲は“666”,“CONTRACT KILLER”。もともとラフな翻訳は渡しておいたので、それをもとにアンディが微調整を加えてくれた。しかし“CONTRACT KILLER”に関してはその手直しを今日スタジオの上にある彼のリビング・ルームで一緒にやり、出来上がったものをhalが1時間程で憶えて録したと言う次第。その歌詞の手直しの前には “666”の英語ヴァージョンの歌入れをしており、halには大変な一日だった。帰ってからビール飲んでピザを食べていつものように本を読むこともなく、いつのまにか寝てしまった。

1999.2.10.WEDNESDAY. 
今日からミックス。ボブとかいうアンディが信頼するミキサーが来た。今日はeの奥方maimaiさんと娘のリンちゃんがスタジオに来た。リンちゃんがアッという間に大きくなってたので驚いた。今日は曲はあがらないという事だったので自分のアイデアだけアンディとボブに伝えて早めに帰った。CDを2枚買った。

1999.2.11.THURSDAY. 
“UP”のミックスがあがった。ある程度進んだところで一回聴いて意見を言ってしばらく待った。さらに出来上がったところでまた聴いた。正直言ってそれを聴いた時は驚いた。というのは僕の最初のイメージと違ったから。しかし何回か聴いてる内にこれもありかなと、思った。実際halは気に入ったみたいだったので、僕のリクエストを少ししてOKを出した。halの歌がかっこよかった。ケミカルで呪いに満ちていてこの曲の一番表現すべきところを余すところなく描き切っていて感銘を受けた。『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』が進展を見せた。maimaiさんからサジェスションがあったお陰で一気に進んだ。またこのゲームが面白くなってきた。

1999.2.12.FRIDAY.
今日は起きてから郵便が来た。僕の弟のノリに本を送るように頼んでて、それが到着した。サンキュー、ノリ。その後両替に行った。TCを細かくいちいち両替するのが面倒になったので手持ちのTCを全部換金した。そしたらその額がちょっと大きかったので、どこの銀行で替えたかとか、その時のレシートはあるかとか質問されてうんざりした。入関を思いだした。日用品を買って一度フラットに戻って昌巳さんに電話して来週あたり飯でも食べましょうと約束した。スギゾーさんも来週こっちに来るらしいのでタイミングが適えばみんなで会おうということになった。昌巳さんがその時テレビで『鬼警部アイアンサンド』を観ていて、その回にまだ6歳か7歳くらいのジョディー・フォスターが出てると言う。「彼女はこんな小さい頃からすでにすごい。ぜひ観た方がいい」というのでテレビをつけてその回の残りの30分を観た。確かに彼女はもう今と変わらないものを発散してて興味深かった。その後halとオクスフォード・ストリートからBERWICK STREET、そしてSOHOに行ってホルボーン経由でスタジオに行った。途中で新しいバッグを買った。クールなやつで凄い気にいった。CDも買った。スタジオでは“666”のミックスをやってた。途中でミキサーの調子が悪くなってしばらく中断して結局今日はお開きになった。『蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす-ヘミングウェイ全短編集3-』読了。

1999.2.13.SATURDAY. 
“666”のミックス終了。禍々しく美しく絶対零度の炎をまとってそれは姿を顕した。この曲は日本語ヴァージョンと英語ヴァージョンの2ヴァージョン。英語ヴァージョンの方はhalの歌がまさにピュア・イーヴィルの世界を顕在化させていて、触ると火傷しそうな冷たさだった。ボブは今日で終了。サクッと帰って行った。いいミックスだったぜ!Calum到着。来週からミックス開始。久し振りに会っても相変わらず面白いヤツだった。『RESIDENT EVIL(バイオハザード)』ちょっと進む。maimaiさん&リンちゃん明日帰国。『宗祖ゾロアスター』読みはじめる。

1999.2.14.SUNDAY. 
ヴァレンタイン・デイ。今日はカムデンに行くつもりだったけど、予定を変えてケンジントンに行って買い物をした。halとeと僕で行った。halがスタンダードなデザインのクールなTシャツを数枚と、ちょっと変わったTシャツを買った。この変わったTシャツというのは恐らくライヴで見れると思う。肩のあたりにラバーで角というか棘がついてたりする珍しいモノだった。僕もそのシャツのヴァリエーションと元章さん用のお土産としてシルバーのリングを買った。その後カフェで一服してタクシーを拾って戻った。halがブリーチをして、なんとも凶暴な雰囲気になっている。halはブリーチすると凶悪でチャーミングな感じになる。凶悪で不満げな赤ん坊。『宗祖ゾロアスター』読了。ジャック・ウォマックの『テラプレーン』読みはじめる。

1999.2.15.MONDAY.
Calumのミックス初日。“CONTRACT KILLER”に着手。これが思いのほか難航した。僕達の趣向と彼の焦点がずれてたため大変だった。Andyがセッション終わりにさしかかるにつれて段々やつれてきた。

1999.2.16.TUESDAY. 
今日は“SLINKEE”のミックス。何度かリクエストして結果的にクールなものがあがった。それが午後4時ちょっと前に終わったので一旦halとコベント・ガーデンの方にショッピングに出た。アニキ情報でそこにいい感じの服の店があると聞いてたので行った。halが物凄くそこを気に入って大喜びで服を買ってた。僕もステージ用に買った。カフェで一服してその後スタジオに戻った。“HOWLING”を途中までミックスして今日はお開きになった。昌巳さんと電話して土曜辺りにメシでも食べようという事になった。『テラプレーン』読了。傑作という言葉を超えた傑作。しかし日増しに本を読む速度が上がってきている。読む本がなくなる前に帰国しなければ。

1999.2.17.WEDNESDAY. 
“HOWLING”ミックス終了。今他の本と併用しつつニーチェの『善悪の彼岸』を読み進んでいるんだけどこれが段々面白くなってきた。最初は固い文体に戸惑ったけど翻訳のノリがつかめてくるにつれ読みやすくなってきて快適。個人的にニーチェの作品は『ツァラツストラ』に傾倒してたので本来これの解説書として書かれたこの本が読みづらい理由がなく、非常に示唆に富む書物に感じられてきた。実際ニーチェを読むたびに如何に自分が彼の哲学に深く影響を受けたかを痛感する。

1999.2.18.THURSDAY. 
今日はhalとケンジントンに行って買い物をした。なんとこっちにはzoeというブランドがある。僕は1着上着を買った。あとステージに使えそうなパンツがあったので購入した。弟のノリにバッグを買った。halはピンクのブレスレッドと首輪を買ってた。これはどちらも鋲付き。刺さります。下手なところにいくと死にます。非常に危険なブツです。“CYCLOTRONE”ミックス終了。チャーミングな仕上がりになった。ソニーのT氏とカヨコさん到着。久し振りに会ったので楽しかった。しかしMTV UKは最悪だ。ろくなものが流れない。同じものを何度も流す。ブライアン・アダムスとMel Cのデュエット曲とシェールと退屈な名前も思い出せないブラコンはもう死ぬ程観た。ステップスとかいう悪い冗談のようなヤツラがヨーロッパで売れてると聞いた時はまいった。ちなみに今僕達の間ではTAKE THAT、SPICE GIRLS、ロビー・ウィリアムスはOKということで意見の一致を見ている。またオフスプリングは思ってた程悪くない、それどころか案外いいバンドということになっている。ヤツラの“PRETTY FLY(FOR A WHITE GUY)”のビデオは名作だ。プロペラヘッズ(だっけ?)の“CRUSH”のビデオはエルビスのそっくりさんが出てきて面白い。またhalはU.N.C.L.E. の“BE THRE”とFATBOY SLIMの“ PRAISE YOU”がお気に入り。“BE THRE”のビデオはダークでかっこいい。“ジェイコブズ・ラダー”っていう映画を思いださせる。この映画は名作。全体的に悪夢を見てるような世界が一貫して続く。HALの“VINYL HEAD”という曲はこの映画に出てくるキャラクターにインスパイアされた。邦題がこういうタイトルだったかどうか忘れた。なんとマコーレ・カルキンが出てる。また“ PRAISE YOU”のビデオも一度見たら忘れられないインパクト。しかしhalはMTVであまりにロックが冷遇されてるので唖然としている。この2ヶ月で見てる間に一度もマリリン・マンソンもコーンもメタリカも、考えられるロック的なバンドは見る事が出来なかった。日本よりかかってないよ。ビックリ!あとスカンク・アナンシー(こう表記するの?)の新作は期待できそう。ビデオで見たら映像もめちゃくちゃかっこいいし曲も素晴らしく良かった。

1999.2.19.FRIDAY. 
カムデンに買い物に行った。“BTBN ”のミックス終了。ハードコアでストレート・エッジなテイストに仕上がって大満足。今日でCalumは終わり。グラスゴーに戻った。サンキュー、カラム!そして引き継ぐのはジェイムス。彼は“DNA ”と“BTBN-slow ”のミックスを担当。ヤツはRONI SIZEのミックスをしたりトリッキーとUB40のコラボレーションでミックスをやったりしてたナイス・ガイ。そういう仕事をしていながらメタル好きという非常にHALの仕事をするのに向いてるタイプ。さあ残すところもう2日になった。あっという間だった。

1999.2.20.SATURDAY.
今日はジェイムスによる“DNA ”のミックス日。まさに出刃包丁をスーツに隠したようなミックスになって嬉しかった。そのあと“BTBN-slow ”ようにhalのコーラスとトーキングを録る。ちょうどその頃昌巳さんとスギゾーさん一行が到着したのでその後チャイニーズを食べに行った。再会を楽しんだ。さあ明日は最終日だ。不思議。

1999.2.21.SUNDAY. 
最終日。今日は“BTBN-slow ”のミックス。僕とeはお互いの機材を片付けた。夜、キャサリンがお別れのパーティーをやってくれた。hal,zoe,eoe,Andy,キャサリン、ジェームス、スティーヴン等が参加した。おいしかった。感無量。食べ終わってミックスも終わってみんなでスタジオでボーっとしてるうちにジェイムスが去りスティーヴンが去りアンディとhalとeと僕が残った。タクシーを呼んで4人でリラックスしながら雑談をした。明日は帰国。アンディには再会することは確信していた。だから寂しいとは思わなかった。

1999.2.22.MONDAY.〜2.23.TUESDAY. 
早朝タクシーというかハイエースみたいなでっかいクルマが来てスーツケース等を積み込んでみんなをピックアップしてヒースローに向かう。10時前のフライトだったので8時過ぎには空港にいた。またパリでトランジットして成田へ。12時間以上乗って日本につくとまた朝だった。成田エクスプレスで大船まで行って一度実家に戻る。ノリが迎えに来てくれた。ノリが留守中はブリクサの面倒をみてくれたり僕のクルマや自宅のケアをしてくれてた。サンキュー、ノリ。しばらくしてブリクサをピックアップしてクルマもピックアップして今度は横浜北部の僕の自宅へ、そこで荷物をおいて今度はhalを送って都内へ。晴れてて気持ちのいい日だった。バタバタしてるうちに夜も更けて3時をまわったあたりからさすがに疲れて頭の中と外がゆっくりとグワングワン回りはじめたので寝た。

1999.2.24.WEDNESDAY. 
今日はうって変わって雨。寒い。おまけに起きたらミーティングの時間を1時間まわっていてぶっちぎってしまった。携帯も別の部屋においてあって鳴ってたのに全然気がつかなかった。halにいたっては電話の音を切っていて曝睡していたらしくやはりぶっちぎっていた。寒いし何もする気がしなくて『バイオハザード』やった。ロンドンで行き詰まったところまで行った。ダウナーでボーっとしていた。夜に一瞬外出した。『タクシー・ドライバー』のサントラ買った。どうしてもバーナード・ハーマンのあのテーマ曲が聞きたかった。

1999.2.25.THURSDAY.
hal取材。今回からhalのみ取材を受けることにした。これは以前からhalと何度か話して出した結論。HALはhalとzoeのバンドなんだけど実はhal自身のバンドで、halという人間を体現するための場。だから僕は自分のアーティストとしてのエゴとかはここには意識的に持ち込まないようにしている。彼女が歌うべき曲をつくってるし彼女が歌うべき詩を書いている。最初の頃はパワーバランスは拮抗してると思っていたけど、だんだんこのバンドの本質が見えてくるにつれ僕は全てをhalにシフトするようになってきた。そう言うわけで取材ももっとhalをアピールすべきだと思って今後のものについてはhalに受けてもらうことにした。その後ミーティング。ジェトラグでボーっとしてあんまり頭に入らなかった。

1999.2.26.FRIDAY. 
撮影のためのフィッティング。今回の撮影は“NAKED TRACKS”用。と言ってもジャケットは絵になるのでこの写真はまー雑誌にのったりする時に使うもの。レコーディングしてたので僕達抜きで話が進んでて、全くhalのテイストでないものになってたので方向修正する。しかしこのチームでかじ取りすべきメーカー・サイドの人間がいまいちフォーカスが定まってないので大変だ。実際メーカーのかかわり方はゆっくりと変わってきている。過渡期で、メーカー・サイドとしてもどうアーティストと関わるべきかわからないんだと思う。僕達については音楽的な部分ではアドバイス出来ないし(そりゃそーだ)、宣伝については宣伝の担当がいて、プロモーションに関しては事務所の人間の方がそのアーティストに専念してる分信頼できる。いくつものアーティストを一人の人間が扱うなんてできるわけがないし、そうなるとメーカーの人間に残された道はバジェットの管理だ。これは絶対に必要。つまりきちんと金の計算と管理ができる人こそこれからメーカーに求められていく人だと思う。これからメーカーと契約を結ぶ人や結びたいと思ってる人は、メーカーの人間にとってアーティストは基本的に商品にすぎないということを憶えておくべくだと思う。hal取材2本。

1999.2.27.SATURDAY. 
残務処理日。ソニーに行っておおまかにやった。これで一段落した。明日は休みだ。

1999.2.28.SUNDAY. 
晴れ。『スターシップ・トゥルーパーズ』見る。ポール・バーホーベンは笑えるね。まだジェットラグから立ち直ってない。