comics & books

[1]『LIVE!オデッセイ』狩撫麻礼/谷口ジロー
まず谷口ジローは渋いオヤジを描かせたら右に出るものがいない。そして狩撫麻礼はアウトローを描かせたら右に出るものはいない。このコンビで傑作でないわけがない。僕は一時期狩撫麻礼原作の作品にはまっていろいろ集めた。やっぱり『ボーダー』とかは人格形成にかなりの影響受けた。彼の原作のモノは8割方持ってるけど縁がなくてこの作品は持って無かった。狩撫麻礼が原作の音楽マンガっていうだけでVALISの啓示だと思った。これは巡り合わせだった。それか非常に巧妙な罠のどちらかだ。でもここまで巧妙な罠だったらかかってもいい。僕はこの調子で行くぜっていう気分になった。ありがたいマンガ。しかし狩撫麻礼や谷口ジローのマンガをバンバン出してたアクションっていう雑誌は本当に偉大な雑誌だよ。未だにやっぱ眼が放せない。最近の狩撫麻礼モノではもう終わっちゃったけどやはりアクションに連載されてた『タコポン』が最高だった。神がかってるね。後『ボーダー』で作画してた人の『軍鶏ーシャモー』は今連載中だけどあれは紛れもない傑作。

[2]『風の抄』谷口ジロー/古山寛
谷口ジローが描く歴史物と来たら無視できない。江戸時代を通じて歴史の裏で暗躍した柳生一族、その初期、柳生十兵衛の時代を舞台にした話。これが非常に読みごたえがあって良かった。相変わらず谷口ジローの描く男は渋くてイイ。生きざまと生きざまのぶつかりあいがまた非常に心を動かすものがあった。一見権力争いに見えるんだけど、下で働く人間たちにはそれぞれのドラマがあって実は問題の焦点は全く違ったところにある。特に幕府を存続させるために未然に手を打とうとする柳生一族のネットワークの張り方とかそれでもそこを突き破って来る相手方の根性とか、なんとも凄まじくて圧倒される。また大きな目的の為に、例えば手紙を届けるのに命がけになって時にはあっけなく死んでしまったり、またはそれを阻止するためにあっけなく命を奪ったりする様はこれまた凄まじかった。人間はこういう狂気を持ってる。大儀のためによくわからない枝葉のところに命がけになる。時にネガティブに働く性質だ。人間はこういう狂気を持ちながら時に戦争に加担したり金もうけのために環境破壊したり盗聴法案通したり私怨で多くの人間を犠牲にしたりしながら生きてゆく。しかし谷口ジローの絵は好きだ。彼のマンガは見つけたら買うことにしてる。

[3]『モナリザ・オーヴァードライヴ』ウィリアム・ギブソン/黒丸尚
[MONA LISA OVERDRIVE] William Gibson
『ニューロマンサー』、『カウント・ゼロ』に続く完結編。モリィにケイスにボビィにアンジィにフィンにレイデイ・ジェインにと今までのキャラクターの総決算。今までの混沌に一つの光を与え、また全てを渾沌に押し返す一撃だった。黒丸氏の訳も冴え渡る傑作。無意味さと意味を持つものの区別がだんだん曖昧になって割り切れない部分を楽しむという新しい面白さ感じる。スピード感と焦燥感と野心と神秘主義と世界の創世とが全て一つに結集して強烈な迫力を醸し出す。同時にとてもベーシックな部分で非常にSF的でハードボイルド。モリィはもう伝説のイコンとなっていてその言動はスタイリッシュで深みが底知れない。作者も自分の創作の力を超えたところで彼女を描こうとしたんだと思う。この三部作は面白かった。あらためて黒丸氏の訳業の見事さにも舌を捲いた。このシリーズはもう書き継がれる事はないと思うけどまだ『クローム襲撃』でこのスプロール世界を楽しめる。