comics & books

[1]『アルベマス』P.K.ディック
[Radio Free Albemuth] Philip K Dick
『VALIS』に連なる作品の一つ。あまりに今の自分の気分にシンクロしてて読んでて辛かった。同時にあまりにもリアルだった。不完全な神が作った残酷で悪意に満ちた世界に善的なものが介入するというグノーシス的世界観を背景にした物語。同時にディックの個人的な神秘体験が色濃く反映されていて、それがこの作品を異形にしている。死でさえ「救済」や「大きな目的」という名のもとに善しとする考えは一種の狂気。生の意味を捕らえ損ねかねない。しかしこの作品を読んで涙を禁じ得ないのは何故だろう。この思想自体、弱く壊れやすい人間が、この敵意だらけの世界を生きていくために、なんとか見つけだした一種の逃げ場だったかもしれない。しかし僕にはリアルな世界だった。僕にとってこの本の中の世界は真実。今halが『VALIS』を読んでいる。最初の数ページで彼女にはこの本が自分の世界を描いているように感じたと言っていた。僕も『アルベマス』を読み終えたのでまた『VALIS』に戻ろう。ディックのこの危うさは抗いがたい魔力を持っている。芥川龍之介の『歯車』のように狂気の人間が書いた黙示録。ディックの狂気は覚醒だった。

[2]『ラヴァーズ・キス』吉田秋生
舞台は鎌倉。僕は高校が鎌倉だったから、ここで既にこの作品好きになった。人間関係が面白くて、たった2巻しかないのに凄く世界が広がる話。もう戻ってこない時間に対して人はどうしても郷愁を覚える時があるけど、その時の切なさは誰でも共通だと思う。小さい時のことでもいいし、昔のガールフレンドやボーイフレンドのことでも、飼っていた動物のことでも、もういない友達のことでも、何でも。そういう気分を思わず味わってしまうのが彼女の作品の凄さだと思う。だから吉田秋生の作品は好き。ちょっと違うけど小林なんとかっていう人の『風呂上がりの夜空に』はそういう意味で似てる。僕はこの作品大好きだった。

[3]『牧神の午後』山岸涼子
ニジンスキーを描いた作品。山岸涼子は神がかった天才を描かせたら世界イチ。その危うい精神のバランス、瞬発力、人智を超えたビジョン。あまりにも儚くて脆くて今にも壊れてしまいそうな一瞬の美を描いていて読んでいてため息がでる。この作品程天才を描き切っている作品はあるだろうか。危険で同時に魅惑的な作品。これはでも読んでて怖くなった。なんでこういう時期に僕はこの作品に出会ってしまったんだろう?