comics & books

『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブソン/黒丸尚 訳
[NEUROMANCER] William Gibson
再読してこれが10年以上前(1984年発売)に書かれたものとは信じられなかった。今回読み直して、前読んだ時と違う視点で読むことが出来た。違う視点を持って読み直すことが出来る時点で、この作品の深さを証明してる。キャラクターの立ち方がクールで惚れ惚れしてしまった。ドライな物言いに反して、実は非常に熱い生きざまを持っている登場人物達に共感をおぼえずにはいられない。黒丸氏の翻訳は切れ味抜群で、彼のこの訳がなかったら、日本におけるこの作品の評価はもっとマニアックで閉鎖的なものになってたと思う。チャンドラーを訳した清水俊二、バロウズを訳した鮎川信夫に並ぶ、またはある意味で誰とも比較できない鬼才だったと思う。

『修羅の門』
最初の1、2巻を読んだ時は正直言って、子供騙しのマンガだと思った。せっかく全31巻借りたので読みすすめて行くうちに、だんだん感情移入していって止まらなくなって行った。実際、作者の力量も書くにつれあがって行ったんだと思う。何と言っても10年の歳月がかけられた作品だ。内容は格闘技物で、強い主人公が様々な強敵と戦っていくというもの。しかしこの作品を個性的にしているのは、作者自身の格闘技というか戦うことに対する一種独特の哲学だと思う。その哲学が時に先走りすぎて、主人公が人間でないような空虚な感じがする時がある。そのぐらい強い考えを作者は持っている。陸奥圓明流という謎めいた流派と生死を賭けて戦うという一瞬に命を燃やす生きざまが共感を覚えずにはいられない。

『BANANA FISH』吉田秋生
なぜこのマンガを再び読みたくなったんだろう。とにかくふと読みたくなって全巻揃えた。切ない話。吉田秋生はなんて切ない話を書くんだろう。狂気の度合いは『吉祥天女』に負ける。でも切なさではこちらが勝つ。エンディングの何とも言えない気分は人がいずれ体験する生の一側面。人生に敗者はいない。どう生きるかが問題だ。誰かに評価されるのではなく、自分でカタをつけるしかない。生は残酷で不条理で無意味。しかし同時に優しくて生き抜く意味にも満ちている。