zoё's studio

BOOKS/COMICS



(a)『レクイエム』ジェイムズ・エルロイ
ジェイムズ・エルロイ処女作。なんと私立探偵もの。私立探偵が主人公になってるものは彼の作品の中でもこれだけ。彼の作品の中で最も娯楽色が強く、最も楽観的な雰囲気の漂う作品。エルロイの個性は発揮されてるとは言いがたいけど後の作品に登場する人物の原形はいくつも発見できる。主人公の親友ウォルターに関しては、この後彼の作品の中で様々な人物の中にその影を見い出す事が出来る。またヘイウッド・キャスカート警部はホプキンズ・シリーズのフレッド・ガファニー、L.A.4部作のダドリー・スミスにつながるダーク・サイドの原点だ。また肉親との複雑な関係性というモチーフも既にここに見る事が出来る。その他様々なキャラクターのルーツを発見出来て面白かった。彼の大ファンならばぜひとも読むべき作品。また初めてエルロイに接する人は絶対に手を出してはいけない作品。

(b) 『秘密捜査』ジェイムズ・エルロイ
ジェイムズ・エルロイの2作目。何とあの伝説的人物ダドリー・スミスが登場する。しかし時代的にはブラック・ダリア事件の後でL.A.4部作でいうと『ビッグ・ノーウェア』の時期。しかしこの主人公の名前やこの本の事件の事が『ビッグ・ノーウェア』には全く言及されてなかったのでこの話はパラレル・ワールドというか、外伝ととらえても良いと思う。面白い事にサッド・グリーンも出てくるしダドリー・スミスの部下もマイク・ブリューニングとディック・カーライル。つまり警察内部のヒエラルキーとかはL.A.4部作と酷似している。しかしこの部下2人はL.A.4部作の時のように太った下品な感じではなくて、神経質な細みの人物として描写されている。これはL.A.4部作のプロトタイプと謂っても良いと思う。内容的にも1作目とうって変わってエルロイ節になっておりダークで絶望的な雰囲気と運命に抗おうとする人間が描かれている。この後書かれるホプキンス・シリーズよりもある意味で今のエルロイのタッチに近い作品だと思う。この作品をL.A.4部作の前に読んでもいいかもしれない。勿論初期の作品故の小さな欠点はあるけどそんなものはどうでも良くなる程のパワーと情熱に溢れた名作。 ここで彼の作品を系統立てて挙げておく。 @『レクイエム』“BROWN'S REQUIEM”処女作。 A『秘密捜査』“CLANDESTINE”第2作 警部ホプキンズ・シリーズ(全3作)THE LLOYD HOPKINS TRILOGY/L.A.NOIR B『血まみれの月』“BLOOD ON THE MOON ” C『ホプキンズの夜』“BECAUSE THE NIGHT” D『自殺の丘』“SUICIDE HILL” E『キラー・オン・ザ・ロード』“THE KILLER ON THE ROAD” L.A.4部作 LA QUARTET F『ブラック・ダリア』“THE BLACK DAHLIA” G『ビッグ・ノーウェア』“THE BIG NOWHERE” H『L.A.コンフィデンシャル』“L.A.CONFIDENTIAL” I『ホワイト・ジャズ』“WHITE JAZZ” J『ハリウッド・ノクターン』“DICK CONTINO'S BLUES AND THE OTHER STORIES”L.A.4部作外伝。短編集。 K『アメリカン・タブロイド』“AMERICAN TABLOID”(未読) L“MY DARK PLACE”(未読)

ン『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス
彼の本は『24人のビリー・ミリガン』しか読んだ事がなかった。『24人のビリー・ミリガン』は凄いインパクトがあった。ノン・フィクションというのが信じられなかった。この本は人間のそこ知れない凄みを再確認させてくれた。『アルジャーノンに花束を』はタイトルは知ってたんだけどいまいち食指をそそられなくて読んでなかったんだけど、今回ロンドンで読む本も限られてきたので読んでみた。最後の行を読み終わった時は涙を禁じ得なかった。そしてこの感情は何なのか考えてみた。失われてもう戻らないものに対する感傷なのかもしれない。とにかく何か普遍的な感情に突き動かされたんだと思う。思わず去年死んだレオのことを思い出した。レオを失った時になんか近い感情を体験したような気がした。この作家は才能があると思う。でもそれは例えばヘミングウェイやニーチェが持ってたような天才的なものではないと思う。もっとエンターテイメントで狂気と距離をおける人だと思う。だからビリー・ミリガンのような作品が書けたんだろう。僕は『アルジャーノンに花束を』が名作で読むに値するものだと思う。と同時にこの作家は僕のスペシャルな作家にはならないとも思う。僕は狂気を否応なく自分のうちに取り込んでしまう作家を愛する。それはヘミングウェイだったりフィッツジェラルドだったりニーチェだったりエルロイだったりバラードだったりディックだったりする。ところで村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』はこの本にインスパイアされたんじゃないかな。しかしこの本の最後には泣かされたね。

゙『蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす-ヘミングウェイ全短編集3-』
『われらの時代・男だけの世界-ヘミングウェイ全短編集1-』、『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪-ヘミングウェイ全短編集2-』、そしてこの本でヘミングウェイの短編は全て網羅出来る。僕は彼の短編の多くを2回以上読み返している。彼はその短編において真価を発揮していると言っても差し支えないと思う。彼の短編はあまりにもオリジナルで誰にも似ていない。そして読めば読む程彼のあまりにも繊細で暗い感性が浮き彫りになって行く。この本は彼の未発表の作品と、発表されたもののうちでも晩年の作品が収録されている。僕はこの作品集は他の作品集に比べてとても個人的なものだと思う。彼の抱えていた虚無感と生への叶えられない希望が血みどろで闘っている。ディテイルに対するハッとするような視点とユーモアに満ちた雰囲気はまだどこかに確実に漂っている。しかしゆっくりと存在感を増す暗い影がこの作品集に寂寥感を投げかける。解説にあるようにここには死にゆく野生動物の最後の旅の足跡が刻まれている。透き通った悲しみと絶望の世界。

゚『宗祖ゾロアスター』前田耕作
ゾロアスターを始め宗祖には興味を魅かれる。宗祖でなくともグルジェフやラスプーチンやシュタイナーやテスラや、カリスマを持った人間には好奇心を駈きたてられる。ゾロアスターはキリスト生誕に遡る事少なく見積もっても千年以上は、たってるらしいので彼の存在自体がもう神話めいていて、いまいちリアリティーに欠けたけどこういう歴史に生涯を賭ける人もいるのかと思うと面白かった。火を奉じる信仰、決して折り合う事のない光(オルムス)と闇(アリマン)が拮抗する場所として世界を認識、失われた聖典『アヴェスタ』…。興味深い様々なフラグメンツがある。でも僕の知識ではその概念を捕らえられなくて漠然とした手触りだけが残る。しかしニーチェのツァラツストラのモデルになるだけの何かをこの人物は持っていたんだろう。

焉wテラプレーン』ジャック・ウォマック
『テラプレーン』は、処女作『AMBIENT』(未訳)、『ヒーザーン』、『テラプレーン』、まだ書かれてないあと3作の全6部構成からなる近未来史の一部。まず『AMBIENT』を読む事が出来ないという状況が残念だ。なぜならこのシリーズはまぎれもなく傑作だから。『ヒーザーン』を初めて読んだ時はその異質さに驚いた。『テラプレーン』を読んで、この作家はただ者ではないと確信した。エルロイとはまた違った意味で、この凄さを説明するのは非常に困難だ。彼の作品に対する適切な言葉が浮かばない。同時にエルロイとこの作家は共通した何かを持ってると思う。世界に対する視点。ただ表現の仕方が全く違う。バックグラウンドも全く違う。しかしこの両者に共通した何かがこれからの文学の新しいスタイル、言い換えれば文学が表現すべき世界だと思う。アメリカの底知れないところは既にこんなに切実で同時に新しい作品が生まれているという点だ。それもやはりアメリカでは全てが極端なところまで行ってるからだろう。決して良い意味だけではなく(むしろ悪いと言ってもいいかも)アメリカは最も世界で進んでいる国、近未来の世界の象徴/縮図なんだと思う。だから芸術も、評価や批評が追い付かないスピードで産まれてくる。この作品はそういう意味で2重に近未来的な作品だった。そして同時に面白い本だった。初めはそのスタイルに戸惑うかもしれない。全てがユニークだからね。でもロバート・ジョンソンやテスラやテラプレーンやスターリンや様々なディテイルがまたクールなんだよね。『ヒーザーン』をもう1回読みなおそう。続きは書かれたんだろうか?それにしても、『AMBIENT』邦訳してくれないものか…。









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